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ドレミ音階の竹笛のできるまで
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最終更新日:2017.01.15
「一日一笛」というと粗雑な笛をイメージされるかもしれませんが、手間をおしまず作っています。笛の形状や誤差のデータも記録。1100本を越える膨大なデータを元に笛
●谺堂の笛作り

●竹の伐採

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房総半島のメダケ林

 

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和歌山市唯一の節間の長いメダケ林

それでも45センチを越える竹は少ない

 

笛になるのは節間の長いメダケです。昔から11月に切るのが最良とされています。農閑期ということもありますが、竹も冬の凍結にそなえて水分が少なくなっているそうです。

谺堂では和歌山市内で一カ所だけ節間の長い竹が生えている場所があって、地主さんから許可を得て竹を切らせていただいています。昨年は1月と11月に千葉県の房総半島まで竹を切りにいきました。

写真は房総半島のメダケ林。見事な竹がたくさん生えているように見えますが、風の強い平野部は竹が傷だらけになっています。また毎年伐採するために管理されている「竹林」がなくなり、所有者すらわからない荒れた竹やぶが多くなっています。

守山も車で千葉県まで行き、ホテルに宿泊して竹を探しまわりましたが、竹を切ろうにも所有者がわからず苦労しました。早口の千葉弁で「○○の△△を左行って、牛小屋のある家だ」と言われても「牛小屋」しか聞き取れません。夕暮れの村はずれで牛小屋探してさまようのは、ゲームの世界みたいで、まぁ面白かったです。

ようやく探し出した持ち主にお願いして竹を切るのですが、放置された竹やぶは密生して猫しか通れないほど。傷のない節間の長い3年目の竹を探して切ります。若い竹では水分が多く、1年乾燥させると収縮してシワがよることもあります。

節間は最低でも45センチは欲しいところ。千葉では最高で60センチ。和歌山市内で52センチの竹がありますが、数は少ないです。節の太さは18ミリ〜23ミリ。1本ずつ反りや傷の有無を確認して、節間と太さを測って切っています。

1本の竹から笛になるのは3〜4本。切ってみたら傷があったり、断面が丸くなかったりするので、50本切っても120節とれれば上等? 200本分も確保するのは大変です。

竹を切るのは数日間晴天が続いて空気が乾燥した日を選びます。おかげで11月のスケジュールは竹切り優先。竹を切り終えるとホッとします。

 

笛を作りはじめたころから取引のあった竹問屋さん。先代のご主人が亡くなられて出荷をやめていたのですが、千葉まで行った時にご挨拶させていただいたところ、娘さんが職人さんにお願いして笛用の竹を切ってもらえるようになりました。ありがたいです。

わざわざ千葉まで行ったのは、そういうこともあってのことです。

●寒晒しとクリーニング

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とゴミを取った竹

3年目の竹は黒ずんでいます

 

切った竹は皮も汚れもついています。1本1本傷をつけないように皮やゴミを取り除きます。守山は和歌山市内の竹を切って、すぐクリーニングしたのですが(写真)、千葉の竹問屋さんにうかがうと「寒晒し」と言って、強い海風に3月までさらして乾燥させたほうが表面が硬くしまった美しい竹になるとか。守山も真似をして、裏のひさしの下(雨が降り込まない場所)に立てることにしました。和歌山市の竹はクリーニングしてしまいましたが、千葉で切ってきた竹は皮をつけたまま「寒晒し」しています。

寒晒し」が済むと、クリーニングして「油ぬき」です。

●油ぬき(加熱処理)

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クリーニングが済んだ竹を1本ずつ炭火であぶります。焦がしてしまっては元も子もないので、細心の注意をはらいながらの作業です。1日頑張って2mの竹50本が限界。何日間かにわけて晴天をえらんで油抜きをします。表面の油分にホコリがついて黒く汚れていた竹が美しくなります。

作業自体は面白いですが、朝9時から夕方5時すぎまで竹をあぶると、歩けなくなるくらい足腰にきます。あぶり終わって七輪を片付けている時に、新聞の集金に来たオバチャンに「楽しそうなことして」と言われた時には言葉を失いました。

バーベキューでもやっていたように思ったんですかね。

 

油抜きが終わった竹は1年間乾燥させて翌年の材料になります。

●加熱殺菌

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笛にする1ヶ月前にカセットコンロで加熱殺菌します。

(写真は昔ワークショップをしていた頃の材料の竹なので焼きすぎています)

加熱することで

 ①カビや虫を殺すことができる

 ②竹が硬化して響きがよくなる

 ③悪い竹は割れてしまう

 ④谺堂の笛だと一目瞭然 …というメリットがあります。

 

将来的にはひび割れ防止に樹脂を染み込ませて表皮を剥いた笛も作りたいと考えています。表皮を剥くと「模様」が淡くなって美しくなると思いますよ。

1時間15本のペース。退屈なのでDVDを流して。定番は「時をかける少女」「サマーウォーズ」。竹が多いと「続・夕陽のガンマン(178分)」。これは英語を聞いて慣れるため。

たまに「ストライク・ウィッチーズ(劇場版)」。

 

加熱殺菌した竹は1ヶ月間寝かせます。昔「竹を焼いたら収縮するけど、1ヶ月かけてゆっくり戻ろうとする」という話を聞いたことがあるからです。

●さぁ笛作り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●吹口の「見立て」

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竹を切ってから1年数ヶ月。3月になってようやく1年の長い笛作りがスタートします。

まずは、どんな笛を作るか。楽しい材料選びです。

琉球民謡の演奏家が使う細くて短い笛。いくら細いといっても細すぎると鳴りが悪くなります。かといって20ミリより太いと買っていただけません(涙)。篠笛の持ち方で演奏されるのでピッチは440Hz(20℃)より4〜14セント高めに作ります。鳴り響く笛より控えめな柔らかい音色が好まれるので。吹口のエッジは角を削って音色を抑え、調子外れの音が出ないようにします。女性でも使いやすいように指穴は小さめに。

守山好みの太くて長い笛なら、毎回「最高傑作を作るぞ」と挑戦的に。440Hz(20℃)か少し低めに竹を切り、吹口も少し大きめ。指穴も大きすぎても吹きにくいですが、小さいと響きが悪くなるので10ミリを越える程度にします。

ワクワクしますね。

 

午前中の作業で記録するのは

①笛の全長 ②節から何ミリで切ったか ③吹口部分の外径 ④吹口部分の内径 ⑤管尻の内径 ⑥吹口のサイズ ⑦エッジの傾斜 ⑧筒音の高さ(オクターブを変えて)など

 

竹を切る時は角材にV字型に溝を掘った台に、竹に傷がつかないように柔らかい軍手を乗せて切ります。写真では軍手が滑り止めがついた方になっていますが、これは逆。

昔テレビに出ていた頃、取材に来た某番組のディレクターが「軍手っ!?」と鼻で笑いました。_こういう職人の工夫を嗤うヤツは本当にいけすかないですね。

 

 

 

最初の作業は、吹口の位置を決める「見立て」です。

まず材料の竹に、吹口と指穴をあける正中線をひいて凝視します。これまで集めたデータを元に「ここだ」と思う場所に吹口の位置を決めます。これで失敗すると誤差の大きい笛になります。

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これまで集めたデータから、何となく誤差の出ない吹口の位置があるような気がしていました。理想的な吹口の位置は節から60ミリから120ミリを越えるものまでと、竹によって幅があります。昔は位置がずれることが多かったのですが、最近は「見立て」が外れることが少なくなってきました。

見立て」の位置から吹口方向に5センチのところで切ります。管尻側は作る笛に合わせて少し長めに切ります。

ノコギリで竹を切る瞬間が一番神経をつかいます。万が一ササクレになったら切り直し。せっかくの「見立て」の意味がなくなるからです。

●内部のクリーニング

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竹を切ったら内部を掃除します。メダケ内部には綿のような繊維が付着しています。谺堂の笛は塗装をするので繊維を完全に取らないと、塗料を吸い込んで塗装ゴミになるからです。

 ①まずブラシ(下2本)で繊維を取ります

 ②紙ヤスリを巻いた丸棒でこすることもあります

 ③ステンレス磨きのメッシュのヤスリを巻いた棒を電動ドリルにつけてクリーニング

 ④丸棒に輪ゴムを巻いてゴシゴシ(下から4番目)

 ⑤ステンレスのパイプにシリコンを巻いてガシガシ

 ⑥仕上げ用の細かいメッシュのヤスリ(一番上)で内部を磨き

 ⑦仕上げに丸棒で光沢が出るまで磨き倒します

これだけやっても、指穴をあけた時に繊維が残っていたりします。

これだけで30分。

●竹の内部を削る

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マジックサンダー

滝沢製作所(新潟県)

 

谺堂では吹口に木の栓を詰めるので、竹の内部を円形に削ります。内部は柔らかいので楽です。太さの違う丸棒などに布ヤスリを巻いて削っていきます。

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ヤスリは滝沢製作所のマジックサンダー(粒度#120と#180)。本来は台木に貼付けるヤスリですが、お好みの太さの丸棒に巻くことで棒ヤスリとしても使えます。

このように用途にあわせて形を変える工具は大好きです。

 

ここからBGMスタート。大好きなAWAYAさんの「星の舟」。およそ1時間。CDが終わるころに吹口の成形をしていれば、作業は順調です。

●木の栓を作る

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竹の内部を削り終わったら、丸棒を削って栓を作ります。この作業が一番の重労働。

ちょうどいい丸棒があれば15分ほどしかかかりません。ところが15ミリの丸棒を14.1ミリまで削るような時は、冬でも汗をかきながら1時間ちかく削り続けることもあります。手首や肘を痛めて腱鞘炎になることも多いです。夜中に肘が痛くて目がさめることもあるんですよ。

BGMがないとやってられません。

守山が歳をとって笛作りを引退するとしたら、丸棒削りができなくなったとき。

 

ここでもマジックサンダーが大活躍。丸棒に巻きつけて削っています。

少しでも丸棒が太いと、せっかくの材料を割ってしまうことも(写真)。

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これまで20年間で3本割ってしまいました

 

丸棒の先端が吹口の位置まで入ると先端を成形します。この部分は「反射板」と呼びます。平面のままよりパラボラアンテナのような「皿形」、木目を磨いた方が響きがよくなります。谺堂では流体力学を考慮した特殊な形状の反射板です(企業秘密です)。

伝統的な篠笛では濡らした和紙を詰めて漆を塗っていますね。栓を作るのが面倒でコルクなどを詰める人がいますが、響きが悪くなってノイズも増すのでオススメしません。

●吹口の成形

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写真は「見立て」をはじめる前のもの

 

いよいよ吹口の成形。最初に考えるのが吹口の大きさです。

篠笛など18ミリほどの太さしかない竹に大きな吹口をあけると、外側の傾斜がキツくなって角度がつきます。太い笛では外側の傾斜がないので、エッジの内側を削って角度をつけます。

下の写真のような丸い吹口では、低音域から高音域までツブのそろった音色が期待できます。横長の吹口でエッジの角度を急にすると、尺八のように多彩な音色の笛になります。

 

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「見立て」の成功例(ここから微妙なカーブを成形します)

現在はもう少し横長の吹口です。

 

見立て」が成功すると基音の1オクターブ目と2オクターブ目の誤差を0%にすることができます。誤差がなければ6孔の笛で大丈夫。時計を見てホッと胸をなでおろします。

誤差が出たら7孔の笛にします。「誤差」は筒音の誤差なので、一つ「捨て穴」をあけて「筒音」を使わないようにするのです。篠笛でも多くが7孔になっていますね。7孔になると昼食が遅くなることが多いです。

3オクターブ目も吹口の大きさで誤差を調整できます。大きくすれば高く外れていた3オクターブ目が低くなりますが、大きくしすぎると「吹くのがしんどい笛」になります。

 

ここからが一番神経を使う吹口内側の傾斜の成形です。吹口にはさまざまなトラブルの原因になる場所が決まっています。谺堂ではそれを「テリトリー」と呼んでいます。

尺八の製作現場では、内部に塗った地塗りを削ることで音色や響きのトラブルを直します。横笛では空気の流れが尺八とは異なるので、「テリトリー」を考慮しながら慎重に削っていきます。

 

テリトリー」で軽減できるトラブルは…

 ①ブレスノイズの軽減

 ②2オクターブ目に低音が混入する「基音ノイズ」の軽減

 ③2オクターブ目の音が、気を抜くと1オクターブ目の音になりやすい「へたり」の修正

 ④特定の音程がヒステリックに尖った音色になるトラブルの修正

 ⑤特定の音程の響きが悪いトラブルの修正

 ⑥高音域の出にくさの修正

この時点では指穴があいていないので、ブレスノイズの出にくい、2オクターブ目のドがパワフルになるように傾斜をつけていきます。

 

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2オクターブ目のドの響きが悪い時は、矢印の方向に傾斜をつけます

テリトリー」は2011年にブレスノイズを消そうと在庫すべての笛の吹口を削り直した時に発見しました。125本ほど削ったら調律が変わってしまって大慌て。全部調律を直して販売しました。こういう阿呆なことを経験して発見した「テリトリー」ですから、「秘中の秘」なんですが、一つだけ紹介しますね。

写真の矢印の方向にトラブルがあると2オクターブ目のドだけ頼りない音色になります。この場所はどう考えても息が当たりませんが、守山の推測では2オクターブ目のドが出る時の渦の圧縮で、この位置から「細い空気がもれる」みたいです。

21年間でたった一度だけ、口ひげに空気が当たる感触がありました。

ヒゲを生やしていて良かったです。

●キーを合わせる

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「竹リング」厚さ0.6ミリ

 

吹口が完成すると、管尻を切って目的のキーに合わせます。一般的な笛は20℃で440Hzに合うように切ります。篠笛演奏者が吹く笛では「少し高め」。18℃とか、メリの強い人には13℃で合うように切る場合もあります。

ここで2ミリ短く切ってしまうと「商品価値」が下がってしまいます。毎回必死です。写真の「竹リング」で6セント高くなります。これ、ノコギリで切ったんですよ。

 

笛の音程(ピッチ)は気温で変化します。寒い冬は、冷たくなった笛を吹くと温まるので、吹くたびにピッチが変わってきます。そのため1月2月は笛作りをストップ。サイトの更新作業など笛を作っているとできない仕事を片付けています。

●指穴グラフ

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写真は初期のグラフです

 

いよいよ指穴の位置を決めていきます。普通は一番難しい工程ですが、谺堂では一目瞭然。

笛を作りはじめた際、見本の笛を買うことができず、太さや長さの異なる竹で笛を作りました。翌年の夏休み。子どもたちに「笛作りワークショップ」をすることになって、どうしたら指穴の位置を決める煩雑な作業を効率よくできるか必死で考えました。そしてワークショップの1週間前に完成したのが「指穴グラフ」です。

 ①管尻の内径を測っておく(例:12.5ミリ)

 ②細い紙リボンを吹口の中心から管尻までの長さに合わせて切る

 ③グラフに紙リボンを乗せ、上端を上の線、下端を内径と同じ数字の線に合わせる

 ④交差する線(この場合は7本)が指穴の位置なので、印をつけて笛に写す

たったこれだけで指穴の位置が決まります。5分もかからないですよ。

たとえ太さ17ミリ、30センチより短いE管を作った翌日に、太さ25ミリ、50センチほどのF管を作っても、なんの違和感も感じないで作業をすすめることができます。

守山が「一日一笛」できるのも「指穴グラフ」を発明したおかげです。

 

指穴グラフ」は「6孔の横笛」「7孔の横笛」「リコーダー音階(8孔)」「ケーナ」「尺八」のほか「沖縄音階の笛用」なども作りました。現在「篳篥」を計画中。

 

指穴グラフ」の位置は、あくまで「目安」です。。女性用に指穴の小さな笛を作る場合もありますし、吹口の大きさや肉厚で微調整が必要です(他にも企業秘密アリ)。

●SIESTA

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     閑話休題

 

ここまでの作業で3時間弱。朝9時スタートで昼時です。昔は11時には終わっていたのですが、吹口の「見立て」と成形に時間がかかる一方です。6孔の横笛だと、ちょっと早いです。

 

守山は血糖値をコントロールする薬を飲んでいるので、昼食は12時ちょうどに取りたいです。丸棒を削るのに手間取って、しかも7孔の笛になったりすると、昼食が13時前にずれ込むことも。ときどき低血糖になって、レトルトカレーのレトルトを破る手が震えたりします。

けっこう焦ります。

 

こんな笛作りをしていると昼食後はヘトヘト。集中力も限界になります。昼食の準備も皿洗いも守山の仕事。

そこで小一時間の昼寝

毎晩遅くまでサイトの更新作業をしているので、貴重な時間です。

 

 

ここで「電気料金が安くなるご案内」という電話や「訪問販売」があると機嫌が悪くなります。

●指穴をあける

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一年間に消費するアートナイフの替え刃

(3万2千円分

 

午後はエアコンのある2階の寝室で指穴をあけて笛を完成させます。細い笛や、女性用に指穴を小さくする時は「指穴グラフ」の位置より数ミリ上に。太い笛に大きな指穴をあける時は2ミリほど下にずらしてあけます。指穴をあける時は少し削ってはチューナーを見て、指穴の大きさとピッチをそろえていきます。

6つの指穴のうち1つでも高いと、残った指穴も削り直して高さを合わせなければいけません。指穴をあけた段階では、わずかに低くなっていることが多いです。

「レミファソ」と4つの指穴があいたところで1オクターブ目の調律をチェックします。

①まず「ソ」を2オクターブ目の「ド」に合わせます

②「ソ」を基準に「レミファ(ちょっと低めになっている)」を合わせます

よく出る誤差の一つが1オクターブ目のドより2オクターブ目のドの方が高くなる誤差です。1オクターブ目のドを基準にすると、2オクターブ目のド(音域の中心)が高く外れた調律になります。これは演奏しにくいです。守山の調律では、誤差があっても1オクターブ目のドが低くなるので、あまり気になりません。

 

「ドレミファソ」の調律が終わったら、慎重に各音の「オクターブの誤差」を計測します。普通は2オクターブ目が10セントほど低くなるのですが、誤差のない笛もあります。太いF管やG管ならば「フルート調律」の笛にすることもできます。

 

さぁここまできたら残りは「ラ・シ」の2孔だけです。

上部の2孔の位置は、吹口の大きさや肉厚の影響をうけて変わりやすいです。何ミリずらすかは経験から判断します。

この2孔を「竹笛調律」にする場合は「少し低め」に、「フルート調律」にする場合は静かに吹いて「ソと同じピッチ」になるように合わせていきます。

 

 

およそ2時間で6つの指穴があきます。指穴1つあけるとアートナイフの刃を交換します。笛を3本作ると1ケース。1年間で写真の量になりました。

●調律確認

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立った時の目線に合わせたチューナー

傷だらけの洋服ダンスに下げています)

 

最後に調律を確認します。愛用のチューナーはBOSSのTU−12HTU−12BW。とても古いチューナーですが、素早く指を開け閉めしても針のブレが少なくて見やすいです。古いので音程によっては反応が遅くなることがあります。仕方がないので2つのチューナーを並べています。

1オクターブ目で音程を合わせて、2オクターブ目を確認します。2オクターブ目後半が低く外れる場合は反射板(栓)を詰めて誤差を小さくします。

 

竹の笛はフルートにくらべて細くて短いです。ラ・シの指穴が顔の近くにあるので「フッ」と吹くと、そのままの勢いで指穴から出てきます。息の強弱の影響をうけやすくピッチも不安定です。

一方フルートは太くて長いです。一番上の指穴が顔から離れているので「フッ」と吹いても出てくるのは管内にあった空気です。強く吹いても筒の中で干渉されて、一定の息で演奏しやすい構造になっています。そこで竹笛とフルートの吹き方では誤差の大きさが変わってくるのです。

 

谺堂では2016年の年末から竹笛を演奏する人とフルートを演奏する人のために調律方法を変えはじめました。まだフルートの吹き方に慣れていなくて「ゾーン」に入らないと調律できない状態です。場合によっては調律に2時間かかることもありますが、最終的にまったく誤差がなくなるとチューナーの針が動かなくなって「故障か?」と思う時もあります。

けれども調律の精度を上げるなら工業用のチューナーを買わなければいけないと感じます。

 

最後に吹口の成形をチェック。笛を演奏して「気になる音程」があれば吹口を磨いたり削ったりして音色や響きを直します。先日も3オクターブ目のドがパワー不足。30分くらい、演奏しては首を傾げ演奏しては考え込み… 最終的に吹口の傾斜にわずかな盛り上がりがあるのを発見。

これだけ削って満足しました(写真)。

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こういう作業を何百本とくり返しているので、吹口の修正は「お手のもの」。カリッと削ってブレスノイズがなくなると気持ちいいです。

 

調律が終わるとデータを記録して完成。

笛のピッチ ②カリの限界 ③メリの限界 ④1オクターブ目と2オクターブ目の段差 ⑤1オクターブ目のドの誤差 ⑥2オクターブ目各音程の誤差 ⑦3オクターブ目各音程の誤差 ⑧竹笛調律とフルート調律の差 ⑨各音のオクターブの誤差 ⑩吹口と反射板の距離 ⑪響きの大きさ ⑫ブレスノイズなどノイズの大きさ…

所要時間は40分。

だいたい夕方の5時半には完成します。それから夕食の買い物。夕食を作ると嫁さんが帰ってきます。

 

毎日これだけの作業をするのは大変です。午前中に用事がある日は前日の夕食後に作業を前倒しします。お客様の来られる前日も深夜まで笛を作っています。「前倒し」を1週間続けると1日休日が取れます。「近所の縄文遺跡行くゾ」と毎晩夜なべをするのも楽しいですよ。

 

 

指穴をあけて完成した笛は1ヶ月間置いておきます。指穴という「傷」がついたので、乾燥を進めて傷に慣らします。

1ヶ月後に調律もチェックします。笛を作った日の体調やノリで調律に見落としがないかどうかを確認。1ヶ月置いておくのも調律のチェックも省いてもかまわないのかもしれません。でも細い笛ばかり作ったあとに太い笛を作ったときなどは、少しだけ調律を直すこともありますし、反射板をずらすこともあります。

 

 

 

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塗装用のブラシも手作り

 

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もっと光を…

 

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塗装が終わった笛

 

●塗装準備

チェックの終わった笛は息の湿りを乾燥させて、指穴を削った断面に瞬間接着剤を染み込ませます。これで割れるのを防止することができます。ただ瞬間接着剤と塗料の相性が悪く、そのままだと塗装が浮いてくるので、接着剤の表面を紙ヤスリで削ります。この作業が大変。笛20本で指穴の数は120個(6孔の笛で)。丸めたペーパーで削り続けると指先がボロボロになるんです。腱鞘炎も悪化します。

毎月20本作っていると、接着剤を染み込ませて削る作業で1日かかってしまいます。つらいのでDVDを流しながら頑張っています。

 

●塗装(2度塗り)

塗装は釣り竿に塗られているウレタンエナメル塗料を2度塗りしています。塗装用のブラシも丸棒に洗車用のスポンジを切ったものを貼付けて作ります。スポンジがちぎれると塗装ゴミになるのでハサミでていねいに面取りしています。

 

守山は眼が悪く、直射日光がないと塗装ムラや小さな気泡を見落としてしまうことも。塗装しているベランダは午前中しか日が射さないので朝から塗装をするのですが、日光だけではもの足らなくてスポットライト2つと蛍光灯をつけて。

笛20本で2時間。BGMはエンニオ・モリコーネのコンサート(YouTube)。

モリコーネさんが生きているうちに生で聴きたいです。

 

 

 

塗装した笛は内部に塗装ゴミがある場合は丁寧に削ります。たまに再塗装することもあります。

管尻や指穴周囲にはみ出した塗料を削り落して完成。塗装が終わると2ヶ月放置(熟成)。

またまた時間がかかります。

 

はみ出した塗料を削ると塗装直後だと柔らかく、2ヶ月ほど経つとカリカリに硬くなっているのがわかります。塗装の柔らかいうちは響きが悪くて、とてもじゃないけどお客様にオススメできません(でもたまに鳴り響く笛があります)。例えていうなら生乾きのシャツを着る感じ。

本当は一夏越えて1年くらい経つとビックリするほど響きが良くなるのですが、そんなノンビリしたことはできないので2ヶ月でチェックします。

●検品(音色の比較)

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過去の笛と音色を比較します

 

谺堂では笛1本1本に誤差データを添付しています。笛を作った時にも計測した①〜⑫のデータを再度記録。演奏して違和感を感じる音色がある時は吹口の塗装を磨きます。

ときどき塗装を削りすぎて再塗装することも(アホですね)。

1本あたりデータの計測に40分。吹口を削りはじめると1時間近くかかります。1日に10本が難しくなってきました。

 

さらに同じキーの笛と音色を比較しています(写真)。

「柔らかい音色が好き」とか「迫力ある音色が好き」とかユーザーさんの要望に応えるために調べているのですが、この21年間で音色にご希望をつけてきたお客様は1人だけ?

 

こうして時間と手間をかけた笛のデータを夜中までかけてパソコンに入力。添付している鑑定書をプリントすれば在庫になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

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