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石 笛
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最終更新日 2015.07.23
●石笛とは…

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●CD「石笛」 

・24種類の石笛を即興演奏しています。昭和のはじめに建てられ、和歌山の空襲でも焼け残った旧西本ビルの理想的な音響下で生録音。ノイズだけを除去してCDにしています。

孔の大きさや石質で変わる石笛の音色を、低音域から順番に並べています。そのまま音楽CDとして楽しんでいただけますが、静かな部屋で少し大きめの音量で聴いていただけると、石笛特有の音響効果を体感できます(後述)。

解説のPDF文書をダウンロードできます。守山の演奏技術を盗みたい?方は、石笛の写真を400倍に拡大して吹口部分をよ〜く観察してみてください。

ご注文はメールでどうぞ

                

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 販売を終了しました

●石笛テキスト テキストCD 石笛練習用竹笛

テキスト・テキストCDは販売終了いたしました

石笛練習用竹笛は送料込み400円で販売しています

・詳しくは「石笛道場」で                  → 石笛道場

 

石笛を吹くのは難しいです。力まかせに「ピーッ」と鳴らすだけなら簡単ですが、心を鎮めて静かに吹けば吹くほど、この世のものとは思えない美しい音色になり、神道の神降ろしの儀式に使われる意味を実感できます。

石笛の練習は厳しく手順を守らないと簡単に挫折します。あっという間です。守山は何人も挫折する人を見てきました。

その経験から…

①急ぐ人は挫折するのも早いです

②簡単に吹けると思う人もイチコロです

③呼吸をおろそかにする人も、知らないうちに挫折しています

④テキスト(あるいはこのサイト)を読み飛ばす人も何年も苦労します

テキスト・テキスト音源CD・竹笛を販売してきましたが、腹式呼吸をマスターする前に興味本位で竹笛を1回でも吹いてしまうと①から④すべての理由から、まず石笛の美しい音色は出せなくなります。

ここらへんが、なかなかわかってもらえません。

残念です。

なかなか信じてもらえないと思うのですが、まったく音が出なくても、あせらずあわてず呼吸を乱さない人の方が「見込み」があります。

まず「呼吸」なんですね。

 

「テキスト・テキストCD・竹笛」3点セットをお届けすると、封筒をあけたその手で、まず竹笛を吹いてみようというのが「人間」です。そこでテキストとテキスト音源CDの販売を中止し、サイトを読み進めて行くと「竹笛」の販売記事が表示されるように改めました。

 

「石笛道場」のサイトは工事中で音源の試聴ができないですが、竹笛がなくてもできる修行がわかりやすく?紹介されています。

まずは一銭もかからない「呼吸」の修行からスタートしてください。

 

●神道的?にアドバイス

このサイトから石笛に興味を持たれる方のお便りを拝見していると、神道に興味のある方が多いです。守山は専門的に勉強したわけではありませんが、古い神道のおおらかさにひかれます。仏教や大陸の神々も否定せずに受け入れて、神話の神様も人間的。万物に神が宿るという考え方は、自然とともに寄り添う、道具を大切にする、小さなことに感謝する… 日本人が古くからもつ精神性の中心になっているように感じます。なによりあくせく急がないのがいいですね。いまでも神社は「清々しい空気」に満ちています。石笛を通して、古い神道のおおらかさや清々しさを感じてもらえたら… と思います。

 

そこでアドバイス

石笛には小さな神様が宿っています。その神様を脅かすようなことをすると、決して美しい音色を出すことはできなくなります。

静かに息を吹きかけて(この息の出し方が難しい)、小さな神様の声を聴くように心を鎮めていくと、美しい音色に出会えます。

そんな感じですね。練習用竹笛や一升瓶にも「神様」がいて、いろいろ教えてくれます。

きちんと「神道が好き」と言える人は、無理に急いだり、力まかせに吹いたり、

しませんね?

 

 

石笛の

 ●石笛あれこれ●

 

石笛の歴史  

 

   石笛道場

●石笛の表記について

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・「いわぶえ」の漢字表記には「石笛」「磐笛」「岩笛」の3通りがあります。

石見銀山も(いわみ)と読みますが、「石」をあえて「いわ」と読む場合、銀鉱石のように何か特別な意味があるように感じます。守山は「異読感」が好きで、一貫して「石笛」派です。「復古神道」「古神道」と呼ばれる国学や、国学から派生した本田霊学の資料をみても「石笛」という表記になっています。

「いわぶえ」に強い精神性や宗教性、「風格」を求める人は「磐笛」表記を好まれるようです。何といっても文字が格好いい。ネット上でも「磐笛」派が多いですね。

手のひらに収まるサイズの石笛を「岩」というのには違和感があります。でも写真の女性が乗っているのは「岩笛」ですね。

・どの表記が正しいのか論争しても不毛な感情論になるので、他人がどのような表記をしていても気にしませんが、守山のことを「磐笛奏者の森山さん」と紹介するのは勘弁してほしいです。

●石笛の歴史

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青森県出土の人工石笛

上から

富ノ沢(2)遺跡

野家遺跡

上尾駮(2)遺跡(下2つ)

 

 

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ぬなかわヒスイ工房のレプリカ石笛

(鹿の声が簡単に出せました)

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石笛が見えない奏法です

 

試聴

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縄文時代の石笛(シャーマンの石笛

石笛は縄文時代中期ころの遺跡からの発掘例があります。自然石の石笛は孔の周囲に人間の皮脂が検出されて「笛」だと推測されたものもあるようです。人工的に貫通孔をあけた石笛も数多く出土しています(写真)。また「大珠」とされているものの中にも、紐が切れるような鋭角のエッジになっているものがあり、「石笛」と考えるほうが妥当だと思われるものもあります。

写真は青森県から出土した人工の石笛です(「青い森の縄文人とその社会」青森県埋蔵文化財調査センター刊より掲載)。下の2点、ヒスイの石笛も長辺に沿って貫通孔があり2本の貫通孔が十字に交差する構造をしています。このような複雑で洗練された構造は自然石の石笛では考えられません。おそらく土製の笛が先に作られ、それをモデルに石に孔をあけたのでしょう。これを所持していたシャーマンの地位の高さがわかります。

縄文時代の石笛のうち自然石のものは(昔ネットで検索して何点か拝見しましたが)不思議なことに穿孔貝があけたような吹きやすい石笛は一つもありませんでした。そのことから「縄文時代の石笛」といっても、天然の石笛と人工の石笛とは、まったく構造を異にする笛だと考えています。

人工の石笛(レプリカを吹く)

出土石笛の下から2番目の石笛のレプリカを、親交のある「ぬなかわヒスイ工房」の山田 修さんに作っていただきました。まず驚いたのは小ささです。USBメモリーほどしかありません。

吹口の他に底部の貫通孔と指孔が2つある石笛です。小さいので非常に操作性が悪く、両手を使って底部を指先で閉じようとすると、石笛が小さすぎて自由に動かすことが困難です。

試行錯誤の末に、ようやく自由に底部の孔や指孔をコントロールする演奏法を発見することができました。

まず写真の向き(指孔が笛の下方にくる)にして、左手で笛の上部を固定します。鼻血を止血するように前から指先で「つまむ」と、指孔の周囲に広いスペースができます。右手は親指と人差し指で指孔を閉じます。底部の孔は鍵状に曲げた中指を添えるようにします。無理に閉じないところがミソです。こうすることで曲げた中指で底部の孔を「こする」ようにして音程をコントロールできます。

変わった持ち方ですが、非常に音程をコントロールしやすくなりました。なにより「小さい」と感じた石笛のサイズが「ちょうどいい」のです。出土石笛の一番下、大型の木の葉状の石笛なら、中指の代わりに薬指を使うと、演奏しやすいはずです。非常に操作性がいいことから、縄文人のシャーマンも同じ持ち方で演奏したと推定していいでしょう。

この演奏法でしか得られないサウンドを模索していて、簡単なことに気がつきました。オス鹿の求愛の鳴き声(ラッティングコール)です。

守山は貫通孔のある石笛(自然石)でよく動物の声を真似ます。小鳥やウソの鳴き声、トンビの声。それにラッテイングコールです。山に近い分譲住宅で夜中にラッティングコールを吹いて、すぐそばの山からオス鹿が応えてくれたことがあります。土地の人から「こんな近くまで鹿が来た」と驚かれました。

青森県で出土したヒスイの石笛も、貴重品なので集落の外に持ち出すようなことはなく、深夜にシャーマンが吹いて、近寄って来たオス鹿の声に先祖の霊や精霊のメッセージを感じ取ったのだと思われます。前述の「青い森の縄文人とその社会」でも、「鳥の声」や「雄鹿が雌鹿を呼ぶ声」を模倣したのでは?と推測されています。

 

 

 

自然石の石笛

縄文時代の自然石の石笛についてはよい資料がありません。写真と大きさがわかれば、手持ちの石笛の中から似たものを探し出して吹くことができます。おそらく「奏法」の用なものはなく、微妙な抑揚をつけるだけだったのではないでしょうか?

自然石の石笛でも貫通孔のある石笛は、簡単にラッテイングコールを吹くことができます。ただわざわざラッテイングコールを吹かなくても、静かな心地いい音色を響かせていると鹿や鳥、カエルなどが応えてくれます。暗闇の中から聞こえてくる動物の声や足音に、先祖や精霊を感じることは不思議ではありません。

守山は試みに、唇のわずかな動きと息の強弱で石笛を吹く演奏法を工夫して「縄文(風)奏法」と名付けました。石笛を即興演奏したものがCDになっています。

古代から中世の石笛(伝統的な神道の石笛)

全国に神社が造られる頃になると神道の儀式も様式化が進み、決まった儀式で吹かれるようになったと思われます。石笛奏者の鈴木昭男さんは由緒ある神職の家系に生まれ、実家に数百年にわたって伝わるという石笛を演奏されておられます。穿孔貝が孔をあけた大型の石笛で、落ち着いた低音と、底部の貫通孔を開閉することで高音を加えることもできます。

神社の板張りの空間で石笛を吹くと、強烈な反射音からさまざまな現象(後述)が発生します。「鎮魂」「浄霊」「清め」「払い」などの儀式に使われると、まさに神がかり的な効果があったことでしょう。

能楽に使われる笛、能管は「ヒシギ」と呼ばれる鋭い高音が出る笛です。このヒシギの音は、石笛の音色がモデルになっていると言われています。

 

国学(復古神道)の石笛

国学というのは江戸時代の中ごろに、儒教や仏典の研究を中心とする従来の学問に反発して日本古来の思想・文化を掘り起こそうと始まった学問です(Wikipediaより)。万葉集・古事記・日本書紀、教典の存在しなかった神道などが研究され、学問として体系化されていきました。日本史の教科書にも本居 宣長や平田 篤胤の名前が出てきます。

平田 篤胤は石笛に深い興味を持ち、自ら「天之石笛」という巨大な石笛を持ち帰っています。この石笛は50cmほどの円筒形だということで、高く鋭い音が出る石笛というより、ミニ・ディジュリドゥのようなものだと思われます。

現在、神主の家系でもない私たちが石笛を楽しむことができるのも、神道儀式を明文化した国学の貢献あってのことなのでしょう。

 

明治以降の石笛(現代神道の石笛)

守山の個人的な印象ですが、神道というのは非常に優れた宗教で、教典をもたないことで教義を柔軟に変化させながら、仏教や大陸神とも共存し、数千年もの間、信仰や儀式を守り続けてきました。国学が神道の教義を明文化したことで、ゆるやかだった神道に「解釈の違い」が発生し、明治になって神道系の新興宗教が多数生まれることになります。さまざまな神道系宗教が石笛を使うそうです。その中で守山が資料を得ているのは「本田霊学」と「大本(大本教)」です。

 

本田霊学の石笛

本田霊学は国学の中の神道に関する部分を本田親徳(1822~1889)が体系化したものです。本田霊学を学ぶ人たちの石笛探しをお手伝いするなかで、さまざまな資料を提供していただき、本田霊学で用いられる石笛の詳しいことがわかってきました。ただ、関係者でもない守山が「また聞き」した情報を、さも真実のように紹介することの危うさや、神事の内容が模倣される危険性も考え、具体的な内容については伏せておきたいと思います。

本田霊学では「鎮魂法・帰神法」という儀式に石笛が使われるそうです。

鎮魂法

鎮魂石を使って魂の力を高める修行です。本田霊学には「生き石」「死に石」という考え方があって、「生き石」はズシッと重みを感じる玉石。「死に石」は軽い石だそうです。本田霊学を学ぶ人は、手頃な「生き石」を鎮魂石として持ち歩き、鎮魂石の中に自分の魂を込める修行を重ねます。フラフラと不確かな「魂の置き所」を、不滅の寿命を持つ石に求めるのでしょう。この鎮魂の儀式のはじめに、場を清めるために石笛が吹かれる場合があるそうです。

帰神法

大昔の日本人は「神懸り」しやすかったそうです。情報や人工的な刺激の乏しかった頃は、人間がよりピュアだったのでしょう。ところが仏教伝来以降さまざまな文化や学問が大陸からもたらされ、情報や刺激が複雑になって、神と一体になる能力が衰えてしまいました。仲哀天皇の頃には琴の音でトランス状態になっていた日本人ですが、琴や琵琶、三味線などの楽器が身近に演奏されるようになると、簡単にはトランス状態にはならなくなったのでしょう。

本田霊学では「幽斎」という儀式で帰神法を行います。儀式は石笛を吹く「審神者」(さにわ)と神主の2人で行います。審神者の吹く石笛の音色に導かれるように神主に神が降りてきます。降りてきた神は邪神や低位神のこともあるので、それを正すのが審神者の役割だということです。

このように帰神法の儀式は、一歩まちがえると邪神がとりつき大変危険なものです。正しい修行をつまない者が見よう見まねで帰神法を行わないように、詳細は非公開とされ、用いられる石笛の条件も公開されません。

 

大本の石笛

大本(大本教)は開祖の出口なお(1837~1918)が明治25年に開き、聖師とされる出口王仁三郎(1871~1948)が教義をまとめた神道系の教団です。出口王仁三郎は若い頃に半年ほど本田霊学を学んだそうです。王仁三郎の著書「本教創生記」の中で石笛についてふれており、「むやみにビュービュー吹くのはよくない」「ユーユーと長く跡の音を引いて、幽と云う音色を発生させるのが第一等」としています。

守山は大本の関係者が持っていたという石笛を見たことがあります。その中で「幽」という音色は「御霊送り」の神事に吹く大型の石笛の音色だと教えていただきました。当時まだ横から吹くことができなかったため、音を出すことができなかったのですが、石笛の中では珍しい低音域の音が出る石笛でした。

見せていただいた石笛はすべて横から吹く石笛で、正面から吹こうとしてもまったく音が出ませんでした。聞くところによると大本では石笛道場のような施設があるそうです。みなさん横から吹かれているのでしょうか。

大本に関する記述も、すべて「また聞き」したものです。直接大本の関係者に取材した内容ではないことを、ここにお断りしておきます。

 

楽器としての石笛

石笛が楽器として演奏されるようになった歴史は浅いように思います。守山が笛を作りはじめた‘90年代には「石笛演奏家」は現代音楽家や民族楽器演奏家など、全国でも数人しかいなかったのではないでしょうか?

経済至上主義のバブル崩壊後、自然回帰・縄文回帰の流れが生まれ、ネットの発達から石笛を入手しやすくなって、演奏する人が増えたように感じます。

演奏もさまざまで、神事のようにイベントの開始時に吹くこともありますし、楽器として正確な音程を刻んで楽曲を演奏することもあります。また、趣味として個人で楽しむ人もいます。

石笛の愛好家が増えるのは喜ばしいことですが、できれば石笛の歴史を学び、使いようによっては「やばい」ものであることを知ったうえで「安全?」に楽しんでいただけたらと思います。

聞くところによると、「俺が石笛を吹くと何人も気を失う」と豪語?している演奏家もいるとか… 

守山は「あくまで自分が呼吸を整え、気持ちよくなるために」石笛を吹きたいと願っています。気持ちよく吹けば、聴いている人も気持ちよくなるものなんですよ。

 

 

●石笛の音色

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一般的な音楽のスペクトラム画像

 

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石笛(No.89)のスペクトラム画像

ノイズの少ない石笛試聴

 

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ノイズの多い石笛(スサノオ)試聴

(赤いザラザラした部分がノイズ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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龍吼 試聴

(音程を一瞬高くして戻している)

 

 

・石笛の音色には①「ピィーッ」という基音。②周波数が基音の整数倍の高周波音、倍音。③ノイズが含まれています。石笛によって基音・倍音・ノイズのバランスが異なるので、石笛の音色はさまざまです。柔らかく粒子が粗い石の石笛はノイズを多く含んで「柔らかい音色」になります。硬く粒子が細かい石の石笛はノイズが少なく「硬質な音色」の石笛になります。

同じ石笛でも吹き方で音色が変わります。初心者はノイズだらけの音色になります。修行を重ねるとノイズがほとんど聴き取れない、倍音がハッキリ聞こえる美しい音色になっていきます。こんなことを言うと気を悪くする人がいるかもしれませんが、音色を聴けば実力がわかります。

・石笛には音響学的に面白い特製があります。CDでオーケストラの演奏を聴いたとします。数多くの楽器がそれぞれ基音と倍音を出しているので「音の総数」は数百にもなります。写真は一般的な音楽のスペクトラム画像です。スペクトラム画像というのは、周波数別の音量を画像化したものです。写真の画像で上端が22000Hzになります。一般的な音楽は、楽器の音が低音域に集中しています。楽器の中で倍音の多い楽器は高音域まで音が広がっているのがわかります。

下の写真は石笛のソロ演奏のスペクトラム画像です。白い線が基音。等間隔に倍音が出ています。「音の総数」は7個程度でしょうか。それで普通の曲と同じ音量になっているのですから、石笛の基音や倍音のパワーは耳で聴こえる以上にパワフルになります。

 

そのため石笛のCDをかけていると面白い現象を感じることがあります。

①CDがどこで鳴っているかわからない(壁全体から音が聞こえてくる)

②音が頭上を泳ぐように動くことがある

③全身が美しい音色に包み込まれるような感じがする

④あまり大きな音量でなくても鼓膜がビリビリする

⑤体を少し左右に揺らすと、音の聴こえ方が変わる

⑥全身がリラックスする

⑦ペットが騒ぐ。またはじっと聴き入る。(幼いペットほどパニックを起こします)

⑧急激に音程を変えると、生音と余韻が干渉しあって「龍吼」という現象になる

 

・音響学的に検証したわけではありませんが、石笛の倍音のような高周波音は壁などでの反射率が高いような気がします。そのため音の聴こえてくる方向が変化して聴こえるのだと思います。

また2万Hzを越えるような高周波音(超音波)には人をリラックスさせる効果があることが知られています。石笛の場合「基音」が2000〜3000Hzあります。そのため2万Hzを軽く越える倍音が出ています。そのために美しい石笛の音色には、聴く人をリラックスさせる効果があるのです。

 

・動物はよく反応します。夕方、ねぐらに帰った鳥が静かにしているような場所で石笛を吹くと、山中の鳥たちがさえずりはじめることもありますし、夜中に鹿がすぐ近くまで来たことがあります。冬眠しはじめたカエルが鳴くことも。そんな動物たちは石笛の音色を嫌がっているわけではなく、興味をもって寄ってくることが多いです。吹いていて気持ちがいいですよ。

ただ、山の向こうからけたたましい犬や鶏の鳴き声が聞こえてくることもあります。幼いペットなどは「半狂乱になる」という話も聞きます。人間に例えると「嫁さんが突然ロシア語で話しかけてきた」というたぐいの「悪夢」に感じているのでしょう。

・音響のいい場所で石笛を演奏しながら急激に音程を変化させると「ギュイン」という唸り声のような音が発生することがあります。龍がほえるような音なので「龍吼」と名付けました。龍吼は生音と余韻が干渉しあって生まれる現象です。

スペクトラム画像を見て驚いたのですが、竜巻のようにうっすらと低音域まで音が広がっています。これを見ると龍吼が単なる不協和音というより、一種の「家鳴り」のような感じです。

このように石笛の音色の特性には、普通の楽器では考えられない「神がかり」的な現象があります。②頭上で音がうごめいたり④鼓膜がビリビリしたり⑧龍吼が発生したり… 縄文の昔にシャーマンが吹いたり、神道の儀式に用いられるのがよく理解できます。

生で体験するとすごいですよ。

 

 

●石笛の種類

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こんな孔でも音が出る 試聴

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正面から吹く場合の吹口の位置

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横から吹く場合の吹口の位置

唇の形は同じです

①横から吹く石笛

冒頭で石笛の定義として「吹いて音が出る石すべて」と紹介しました。ある意味で「なんでもあり」な定義ですが、石笛を横から吹くと小さなくぼみでも音が出るからなのです。写真は守山が「横吹き」を練習した「石笛」です。車に積んで信号で止まるたびに練習しています。一見すると「チィ〜ッ」という虫の鳴くような高音が出るように感じますが、不安定ながら口笛の高音程度の音が出ます。試聴の最後の方がベストの音色です。

石笛を吹く人の大半は、吹口を下唇の正面に押し当てて音を出します(写真2)。本田霊学でも、正面から吹くようです。ところが少数ですが、吹口を左右の唇に押し当てて吹く人がいます(写真3)。大本(大本教)で使われていたという石笛を拝見したことがありますが、すべて正面からでは音が出ず、横から吹く石笛でした。

管楽器を唇の横に押し当てて吹くのは極めて異例な吹き方です。横から吹く人に話をうかがうと「孔のあいた石を探していて、初めて拾ったのが平らな石の中央に孔のあいた石で、顔を横にしないと唇が孔に届かなかった」という話でした。

横から吹いて正確な音程をコントロールする人もいますが、普通はコントロールが難しく不安定なすきま風のような音になります。微妙な唇の当て方で数種類の音が交互に出ることもあります。これを「倍音」という人がいますが、周波数が整数倍になる倍音ではないようです。

音色は正面から吹くより倍音が際立って美しくなり、小さな孔でも想像以上に低い音を出すことができます。

 

以前は「石笛・出土」と検索すると、情報量が少なかったため簡単に博物館のサイトへたどりつくことができ、発掘された石笛を閲覧することができました。人工的に孔をあけた石笛は、吹きやすいものばかりだったのですが、自然石の石笛の中には、正面からではとても音を出せそうにない石笛もありました。横から吹いていたかもしれませんね。

 

 

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穿孔貝(カモメガイ?)

 

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イシマテガイの孔

 

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カモメガイ類の孔

 

 

②穿孔貝の石笛

石笛の孔は、さまざまな原因であいています。入手しやすく、初心者でも吹きやすいのが穿孔貝があけた孔の石笛です。イシマテガイやカモメガイなどの二枚貝は、小さな幼生が岩のくぼみに定着。胃酸で岩を溶かしたり(イシマテガイ)、殻でこすって岩を削ったりして(カモメガイほか)成長します。柔らかい岩では成長が速く、硬い岩では何年もかけて孔を広げていきます。穿孔貝が無数に孔をあけた海底の巨岩が荒波で割れて、海岸に打ち上げられたものが石笛になります。

イシマテガイの孔は細い紡錘形。カモメガイ類の孔は底が丸い「とっくり型」になります。石の割れ方でさまざまな形状の石笛になります。

 

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イシマテガイの孔と石笛の形状

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カモメガイの孔と石笛の形状

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①ペンシルキャップタイプ

細く深い孔を吹きます。息を真下に向けて吹くと音が出ます。初心者でも鳴りやすいのですが、1オクターブを越える音域を持つものは少なくなります。少しくぐもった印象の音色で、大きな音は出ますが、小さな音を維持するのは難しいです。

 

②斜孔タイプ(鋭角)

孔を水平に近い角度で吹くので、ケーナのような吹き方になります。コツがわかれば簡単に音が出ます。音域は1オクターブ前後。鋭くパワフルな音色になります。笛としての性能に優れたものが多く、ブレスコントロールで音量を変えたり、音程もコントロールしやすいです。

③斜孔タイプ(鈍角)

斜孔タイプの石笛は、孔を立てるようにして鋭角な方を顎につけて吹くと、落ち着いた音色の石笛として楽しめます。音域は少し狭くなります。この吹き方は石笛を吹き慣れていないと音を出すことさえ難しいです。

 

④浅孔タイプ

浅い孔を吹きます。初心者にはまず吹けません。音域が広く2オクターブを越える音域をもつものもあります。音色も美しいものが多いです。

 

⑤二連孔タイプ

小さく浅い方の孔を顎でふさいで吹きます。内部の形状が複雑なので、高音域で音が「ビビる」など、独特のノイズがでることがあって面白い石笛になります。

 

⑥溝孔タイプ(鋭角)

溝のような孔になっていても、孔の大半を顎でふさぐことができれば、石笛として吹くことができます。無理な吹き方なので音域が狭く、大きな音も出にくいです。

 

⑦貫通孔

貫通孔の石笛は底部が抜けているもの、複数の孔が内部で結合したものなどさまざまな形状のものがあります。底部をどの指で閉じるかで吹きやすさが変わることがあります。石笛の持ち方を工夫すれば、底部を全開しても音を維持できるものもあります。まさに石笛との知恵比べ。いろいろチャレンジしてください。

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試聴 高師小僧の石笛

③高師小僧の石笛(左)

『高師小僧」は褐鉄鉱の一種です。いまから40万年ほど前、浅い湿地帯で鉄バクテリアが繁殖。植物の根に何層も鉄分を付着させました。現在、湿地性の粘土層の中に生痕化石として残っています。細い根に鉄分が付着したものは棒状で、植物の根が腐食されてなくなり、中空になっています。写真左のものは、イネ科植物のように放射状に広がった根に鉄分が付着したのでしょうか?扇形に中空になっています。

昔、近所で笛教室をしていた時に、堺市内に住む生徒さんが「畑から出てきた」と言っていただいたものです。残念ながら吹口が欠けているので非常に吹きにくいです。無理矢理吹くと、石笛には珍しい低音が出ます。吹きにくいので大きな音は出ませんし、音程もほとんどコントロールできません。吹いていても面白くないです(残念)。

大阪の吹田市周辺の丘陵地ではニュータウン建設に伴って多数みつかったそうです。大型のものは『鳴る石』と呼ばれたそうです。やっぱり吹いた人がいたんですね。守山は枚方市に住んでいたのですが、近所の丘陵で鉛筆ほどの太さの高師小僧を何本も見つけました。現在では大阪府内の宅地開発が進み、高師小僧を探すのは困難になってしまいました。まして写真のような大型の高師小僧は二度と見つからないでしょう。

右は古座川の河原で見つけた褐鉄鉱の石笛です。こちらは落ち着いた音色の吹きやすい石笛です。

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試聴 右端の石笛

④サンドパイプの石笛

サンドパイプも生痕化石です。干潟のような海底にゴカイのような生物が管状の巣穴を掘っていました。そこへ細かい砂が流れ込んで巣穴をふさいだ化石がサンドパイプです。

写真の石笛は和歌山県串本町の海岸産。流れ込んだ砂に鉄分が多かったようで、孔の周囲が茶色く染まっています。石は硬く内部の砂がもろいので、波に浸食されて孔になります。

孔の内面が粗いので、ノイズの多い石笛になります。音色は男性的です。強く吹くと強烈な「破邪」の音色になりますが、抑えて吹くと包容力のある柔らかい音色になります。

内部の粒子が粗いので、静かに吹くのが難しい石笛です。

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試聴 左端の石笛

⑤岩にできた空洞の石笛

泥岩の中でも石灰質や珪酸などを含んで硬化したものの中に、ときどき空洞のあるものが見つかります。かつては水が入っていたのでしょう。そういう空洞も石笛になります。穿孔貝の孔は円形で内部も滑らかなのに対して、このタイプの石笛では孔は不定形で内部もデコボコしています。石質は硬くて緻密です。

内部が不定形なので、穿孔貝の石笛よりは吹きにくくなります。石笛に慣れた人が、孔の形をよく見て、精神を集中して吹くと音がでます。こんな石笛を欲しがる人は浅孔の石笛が好きで、音色にもの足らなさを感じている人だけでしょうね。

音色は硬質で倍音が際立つ美しい音色になります。「目の覚めるような」音色です。

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試聴 中央下の石笛(横から)

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二枚貝化石が抜け落ちた石笛

⑥礫岩から礫が抜け落ちた石笛

礫岩は堆積岩の一種です。砂や泥に礫(小石)が混入した地層が岩になったものです。孔は礫の形になっています。不定形で深いものはありません。石質もさまざま。緻密な泥から、粒子の粗い砂泥のものまであります。

音色は石質によっても違いますが、粒子の粗いものはノイズが多くなります。

左端のものは正面から吹くことができます。残りは「横吹き」専用の石笛です。

試聴の石笛は古座川の河原で見つけた礫岩です。非常にもろいので、守山が持ちかえらなかったら砕けて砂になっていたでしょう。横から吹いた時の音色は抜群です。

 

下の写真は泥岩から二枚貝の化石が抜け落ちた石笛です。「珍石・奇石の石笛」ですが、残念なことに吹口が大きすぎ、滑らかさを欠くので吹きにくく、吹くと唇が痛いです。

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試聴 右端の石笛(横から)

⑦溶岩の石笛

火山の火口から噴出した火山弾の多くは、内部からガスが噴出して表面が孔だらけになります。軽石のような多孔質のものは音が出ませんが、内部が詰まった重い溶岩の中には石笛になるものがあります。

以前ネットで「富士川で石笛をゲット!!」という記事があり、喜び勇んで富士川へ。広い河原を探すこと1時間。写真右端のような石笛を「ゲット」できました。探した場所が悪かったのか、小さな気泡のような孔が多くて、写真の石笛も正面から吹いても音が出ません。横吹きで、なんとか吹くことができました(でも痛い)。

中央の2つは伊豆半島で見つけた石笛。左端は大阪府太子町のサヌカイトです。

溶岩の石笛で正面から吹くような良好なものは、簡単には見つからないようです。でも、横から吹くと立派な「石笛」。

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試聴 左端の石笛

 

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⑧晶洞の石笛

「晶洞」というのは、マグマの周囲に鉱物成分を含んだ高音の水「熱水」が作られ、その熱水が冷えた時に、結晶化した鉱物に隙間ができたものです。紀伊半島では泥岩の岩盤を割って染み込んだ熱水が冷えて、水晶になったものが多く見つかります。中には写真のように晶洞になったものが見られ、石笛として吹くこともできます。

孔の内部はびっしりと水晶が生えていて複雑な形になっています。そのため音を維持するのが難しく、正面から気持ちよく吹ける石笛は数が少ないです。

横から吹くと割合簡単に音が出ます。

音色は温かみに欠けて硬質で鋭く、ノイズの少ない音色です。

 

 

下の写真は公園の並木の根元に敷かれた玉石です。おそらく中国産の石英ですが、晶洞があって、横から吹くことができます。どこかの造園業者の敷地に山と積まれているはずです。晶洞のあるものだけを選んで1個100円で「仕入れ」て1000円で売れば「丸儲け」と思ったのですが、横からしか吹けないので諦めました。

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ストーンショップで見つけたメノウとアンモナイト化石の晶洞の石笛です。

ハーフカットされたアンモナイト化石の中には隔室が晶洞になっているものもあります。写真のように大きな晶洞になったものは少なく、あちこち探していますが1つしか見つかっていません。

やはり正面から吹くと音を維持するのが困難で、横から吹く方が吹きやすいです。

 

試聴

正面から苦労して

横から

 

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ぬなかわヒスイ工房さんの石笛

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演奏動画

(石笛仙人で検索してください)

⑨人工の石笛

ネットで石笛の販売サイトを検索すると、人工的に石笛を作っている人が何人もおられます。イメージ通りの音色の石笛を自然石で入手するには、よほどの運に恵まれないとあり得ません。「練習用に吹きやすい石笛を」と言っても、「吹きやすい石笛」が少ないのです(後述)。そう考えると人工の石笛でも練習はできますし、「そこそこ」の音色が出ます。

「そこそこ」という表現は侮蔑する訳ではなく、例えばヒスイに同じ大きさの孔をあければ「同じ音色・音程」になってしまいますし、緻密な石の石笛の音色は、硬質でノイズが少なく「管楽器」の音色に近くなってしまうからです。

ただ麦飯石や流紋岩で作った石笛には適度なノイズが加わって「心がほっこりする」音色の石笛になります。そういう知識を持って石笛を求めれば、人工の石笛でも魂をゆさぶる音色に出会えると思います。孔の深さを調整して好みの音程の石笛を作ってもらうことも可能です。これは魅力。

写真は新潟の「ぬなかわヒスイ工房」さんと共同開発したヒスイの石笛です。小鳥の声に近い音程なので、吹いていて気持ちがいいです。吹口を少し斜めにカットしているので、向きを変えることで2通りの音色を楽しむこともできます。

試聴

鳥の声

ラッティングコール

静かに演奏

 

 

●石笛の格

捨てられる石笛

守山は20年間石笛を探し続けていますが、よい石笛の見極めは非常に難しいです。そのため石笛を吹けない人の中には海岸の石笛を大量に持ちかえって、結局その大半を捨ててしまう場合があるのです。中には「自然に還します」といって近所の川に捨てることをメールしてきたり、「庭に飾っています」と写真を送ってくる無神経な人もいました。

本当に良い石笛は人の一生を左右するほどの美しい音色を持っています。そういう石笛が値打ちのわからない人の手で捨てられてしまうのは残念でなりません。

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海岸で石笛を選ぶ筆者

石笛倶楽部の旅の一コマ)

石笛を見る目を養う

仮に石笛をたくさん持っていても、気に入って吹くのは数個だけです。一つ一つ「吹きやすさ」や「音色の善し悪し」があり、実際に吹いてみないと素晴らしい石笛かどうかはわからないものです。

石笛の観察眼を養うには、どうしたらいいでしょう。一番いい方法は「良いもの以外は海岸に置いてくる」ことです。「10個見つけて、8個置いて帰る」とすると、迷いに迷って必死に考えて、ベストの2個を選ぼうとしますね。必死になって石笛を観察すると、①見えないひび割れ②吹口の欠け③孔の位置の悪さなどに気がついてきます。

実際に吹いてみると、思ったより吹きにくかったり、音色が好きな音域ではなかったりします。「持って帰っても吹かないな」と気がつけば相当な「目」の持ち主です。

守山は年に1回「石笛倶楽部」の会員さんを誘って、産地を訪ねる旅をしていますが、しっかりと石笛を見極める「目」と、無駄に持ちかえらない「自制心」を持った人は、本当に面白い石笛を見つけています。そういう人なら安心して「とっておきの産地」を案内したくなりますね。

 

石笛の「格」とおよその割合

石笛を探しに行くと、数カ所の海岸で100個ほどの石笛(音の出るもの)が見つかります。昔はこの何倍も見つかりました。守山は必ず音を出して、良い石笛かどうか判断します。100個吹いても持ちかえるのは数個。「石笛倶楽部」の会員さんにプレゼントする「吹きやすくてヒビのはいった石笛」がほとんどで、「これはいい」というのは2個あれば上出来です。20年間で数千個の石笛を吹いてきたことになります。

そんな守山の考える石笛の「格」と、およその割合を紹介します。

 

①石笛にならない「孔あき石」         約50%

②吹くと息切れする石笛            約35%

③吹きやすいが割れてしまう石笛        約6%

④熟練者用の音色の美しい石笛         約2%

⑤吹きやすく音色の美しい石笛         約5%

⑥ほれぼれする音色の石笛           約1.7%

⑦珍石・奇石の石笛              約0.3%

⑧選ばれた者だけが手にすることのできる石笛  超レア

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吹けない「孔あき石」

①石笛にならない「孔あき石」

海岸に落ちている孔あき石のうち半数程度が吹けません。平らな石の中央に孔があると唇が届きません。孔が大きすぎたり、浅すぎるものも石笛にはなりません。石の形が悪く、吹くと顎が痛くなる石笛もあります。長時間吹くと顎関節症になってしまいます。貫通孔で底部の口径が大きいものも音が出ません。大きすぎる「岩」も石笛とは言えません。こういう石を持ちかえるのは、石笛の知識がまったくない人です。ただし横から吹くと「石笛」になるものも多いです。

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吹口の荒れた石笛

②吹くと息切れする石笛

格下の石笛です。海岸で見つかる石笛の7割〜8割がこのクラスです。石笛を静かに吹くと、ノイズが小さくなって美しい音色になります。静かに吹いて音を維持するためには、息の当たる「エッジ」部分の滑らかさが大切です。吹口が荒れた石笛は強く吹くと音が出ますが、息を弱くすると音を維持できません。こういう石笛を演奏しても伸びやかさに欠けます。長時間吹いて肩がこったり首が痛くなるのは、このクラスの石笛です。

ただ「ピー」「ピー」強く吹くことはできるので「縄文ホイッスル」が好みの人には、何も問題ありません。

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割れてしまう石笛

③吹きやすいが割れてしまう石笛

ようやく吹きやすい石笛を見つけても、よく見るとヒビがはいっていることがあります。ヒビがあると言っても、すぐに割れる訳ではないので、割れるまで練習用に吹いたり個人で楽しむことができます。ただ割れる石笛を神事に用いたり、販売するのはNGだと考えています。

守山はこういう石笛を見つけると「石笛倶楽部」に登録された方へのプレゼントにしています。

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コントロールが難しい石笛「昴」試聴

④熟練者用の音色の美しい石笛

石笛に慣れた人が特定の持ち方で吹くと美しい音色が出る石笛です。初心者には吹きにくいかもしれません。守山は、この手の石笛が好きで、何個も持ちかえるのですが、ほれぼれする音色になる反面、演奏には相当神経を使います。魂を込めて演奏しないと美しい音色にならないので、録音には何度も打ちのめされました。20年近く石笛を吹いている守山が「打ちのめされる」石笛ですから、初心者にはオススメできません。写真の石笛「昴」は孔の内部に突起があるため息が乱されて「最弱音」を維持するのが難しい石笛です。ただ上手に吹いた時は倍音が不安定になって音色が移ろう魅力があります。

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吹口が滑らかな石笛 試聴

⑤吹きやすく音色の美しい石笛

ここからが「良い石笛」です。このサイトをご覧になった方には「守山がしょっちゅう海岸へ行って石笛をたくさん持ちかえっている」と思われている人も多いのではないでしょうか。実際は年に2〜3回行って、数個の石笛を持ちかえるだけです。それだけ良い石笛は少ないのです。

吹口が滑らかな石笛は、静かに吹いても音を維持でき、強く吹いた時もノイズが出にくいです。それだけ演奏の幅が広がるので「吹き飽きない石笛」だと言えます。このクラスの石笛を守山が静かに吹くと60秒前後音を維持できます。

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一音石笛「如月」 試聴

⑥ほれぼれする音色の石笛(一音石笛)

吹きやすい石笛の中で特に音色の美しい石笛です。中には「演奏」などしなくても、音を出しているだけで恍惚としてしまう石笛もあり「一音石笛」と命名しています。

「一音石笛」の音色には特徴があって、「最弱音」を維持して吹いていると、倍音がまたたくように変化します。小さな鈴を振っているような音になるのです。ただ、石笛を吹いて「最弱音」を維持するのは非常に高度なテクニックで、腹式呼吸の鍛錬が求められます。「一音石笛」には初心者が見向きもしないみすぼらしい石笛もあって、「見た目の悪い石笛ほど音色がいい」という言葉を実感します。

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石笛「龍壷」 試聴

⑦珍石・奇石の石笛

化石がはいっていたり、珍しい岩石だったり、面白い形だったりする石笛です。石笛「龍壷」は表面に龍か蛇のような模様が刻まれています。これは泥の表面を小さな生物が這った生痕化石だと思われます。写真で紹介した高師小僧の石笛も希少価値は高いです。  

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石笛「海皇」 試聴

⑧選ばれた者だけが手にすることのできる石笛

石笛の中には姿形が美しく、「ご神体」にでもなりそうな立派なものがあります。一度目にすると強烈な印象を残し、手に取るのも畏れ多い?感じです。こういう石笛に出会えるのは、よっぽど「石に好かれる」人なのでしょう。日頃から石を愛でていて、石に話しかけるような人が、このクラスの石笛と出会うのでしょう。

 

 

●石笛の楽しみ方

(守山流)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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古座川町の大谷湿田

 

演奏例 

試聴

難しいテクニックは不要です

こういう体験をすると

自然がいとおしくなりますね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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和歌山市の

守山が追い求めてきた石笛の楽しみ方を2通り紹介します。

「風流」に楽しむ石笛

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昔の人は一人湖面に船を浮かべ、誰に聞かせることなく静かに笛を吹いたりしました。月の光や、ときおり頬をなでる風。思い出したように鳴く水鳥の声。そんな自然と一体になって笛の音を楽しんだのです。風流ですねぇ。

「風流」に石笛を吹くコツを3つ

①場所を選ぶ

左の写真は守山お気に入りのスポットです。谷底に開けた小学校のグラウンドほどの水田で、四方を山に囲まれているのでコンサートホールのように声が響きます。守山は山彦を調査したことがあるのですが、極めて狭い範囲に周囲の「音」が集まってくる場所を何カ所も発見しました。その場所では、はるか遠くの風の音が聞こえてきて不思議な感覚にとらわれます。ブームになっているパワースポットも、多くが「特殊な音環境」の場所なのではないでしょうか?音に敏感な人は、その場所に立った時だけ、周囲にない「気配」を感じる訳です。

写真の水田の中にも、そういうスポットがありますが、笛を吹いて気持ちがいいのは写真左端のあぜ道がT字になったところです。

こんな特殊な場所でなくても、車で行ける範囲で日当りのいい谷底のため池などで石笛を吹いてみてください。視界の開けた場所の方がいいですね。

②「頭」は心を鎮めて呼吸を整えることに専念する

人前で演奏する時は「間違えないだろうか」と不安や緊張を感じたり、「凄いテクニックで驚かせてやる」と気負ったりします。石笛の音色も「不安な音」や「伸びやかさに欠ける音」「ひけらかしの音」になったりします。

自然の中で笛を吹く一番の利点は、そういう「心の乱れ」が生まれにくいところです。鳥やカエルに聞いてもらうのに「不安」や「緊張」、「気負い」は不要です。

それでも「どう演奏しよう」と考えるのが人間というもの。守山流は違います。吹きはじめはゴチャゴチャ考えても仕方がないので、ひたすら「自分の呼吸を整える」ことだけを考えます。音程を変える必要もありません。静かに一息石笛を吹いたら、2度息を吸って石笛を吹きます。このとき「呼吸を整えること」を忘れがちになりますが、本当にリラックスして呼吸が整うまで、しっかりと集中してください。

③「心」は自然を広く感じる

肩の力が抜けて気負いがなくなったら、石笛の音が届く範囲の「自然」をイメージします。半径300mくらいは石笛が聞こえています。その範囲に生きている生き物たちの「生命」を感じてください。鳥もカエルも虫たちも…木々にも音の振動が届いています。

数えきれない「生命」の存在に意識を向けると、小鳥やカエルが石笛に合わせるように応えてくれることに気がつくはずです。「風」になったつもりで「小鳥」になったつもりで、石笛の音色に息の強弱や音程の変化をつけてみましょう。

すると絶妙なタイミングで鳥の声が加わったり、頭上を小鳥が横切ったりします。山の向こうからトンビやカラスが飛んでくることもあります。その瞬間、石笛の音色を通じて自分と自然が一体になったような「喜び」が感じられます。

おそらく「縄文シャーマン」も石笛を通じて自然の「声」を感じていたのでしょう。

 

「香道」風に楽しむ石笛

「香道」というのは香木を温めて漂う香りを楽しむ伝統的な楽しみです。わずかな空気の動きや熱の加え方で香りの強さが移ろいます。参加者は自己の感覚を研ぎすませ、わずかな香りの変化を捕えようとします。また障子に写る木の葉の影のうつろいや、漏れ聞こえてくる鳥の声も香りと共に楽しむそうです。やっぱり「風流」ですね。

「香道」を楽しむためには環境が大切です。パチンコ屋の隣や焼肉屋の換気扇の近くでは「香道」になりません。

音響のいい空間で静かに石笛を吹くと、息を吹き込んだ瞬間に部屋中に音色が広がるのが感じられます。その感覚は本当に「香り」が広がる感覚に似ています。その場にいると美しい音色に全身が包まれるような感覚を体験できます。

石笛の最も美しい音色を引き出すためには、石笛の「弱音」「最弱音」をキープするように吹きます。するとノイズが消えて倍音がハッキリ聴こえるようになります。

一定の音程を維持していても倍音が揺れるように変化することもありますし、時間をかけて音程を変化させると、急に倍音が現れたり消えたりすることがあります。こういう変化を「倍音のまたたき」とか「倍音の出入り」と表現していますが、「いい石笛」を「熟練した演奏者」が演奏しないと体験できません。

しばらく「弱音」「最弱音」で倍音を堪能したら、大きな音程の変化や「強音」を加えるようなダイナミックな演奏に移るのも贅沢な体験になります。

違う石笛を吹くと、音色が変わるので味わい深いですよ。

こういう楽しみ方をするには、まず場所が大事です。音響の悪い場所では倍音の聞こえ方が、ガッカリするほどしょぼいです。南海和歌山市駅の近くにある昭和初期のビル、旧西本ビル(写真)の音響は最高でした。現在は利用ができなくなったのが残念でなりません。

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